チュータ日誌

(2018/04/22)チュータのひとりごと 第555回(中学・高校入学式(2))

 このコマーシャルが大ヒットした素地に、日本には「沈黙は金なり」ということわざがあったからではないかと、わたしは考えています。この考え方は、日本人の伝統的美質である「語らずとも人の気持ちを察し、相手の気持ちや立場を慮る心」という点では素晴らしいのですが、対話的な学びを積極的に行う妨げにもなってきたような気がします。

 この諺は,イギリスの思想家・歴史家であるトーマス・カーライルが著書「衣服の哲学」(日本語訳/宇山直亮)の中で「Speech is silver, Silence is gold.」と紹介した言葉が起源になっています。

 不思議に思うかもしれませんが,これは,日本の諺ではないのです。カーライルは「言語も偉大ではあるが,最も偉大なものではない。スイスの碑銘にあるように,言語は銀であり,沈黙は金である。わたしはむしろ,言語は一時のものであり,沈黙は永遠のものであるといいたい。」と,言語も大事であるが,沈黙がさらに効果的なことがあると述べています。その一方で,「言語がそれ自体高尚であり,沈黙も適切であり高貴であるならば,その両者の結合は,どんなに表現力を持つものとなるであろう。」と,言語と沈黙の結合の重要性を説いています。

 つまり,沈思黙考して,物事を深く考えることの重要性と,言葉によって意思伝達をすることの重要性の両方に触れているのです。

 日本では、「沈黙は金なり」という部分の、「やたらなことをしゃべるよりは、黙っている方がよいと、雄弁より沈黙を評価する意味」ばかりが強調されがちです。しかしカーライルは、言語により表現することの重要性もまた認めているのです。

 沈黙しているだけでは、考えや思いは伝わりません。世界は認めてくれないのです。

 ただし、スピーキングは手段であって、目的ではありません。日本語であれ英語であれ、自らの思いをいかにして伝えるか、それが目的であります。

 世界的教養人を目指す皆さんは、これからのグローバル社会を生きる中で、他国の人々との文化や思想の違いを十分に理解し、さらに英語や他の言語によるコミュニケーションによって相互理解を深める努力を重ねることが重要です。

 日本人の「謙虚さ」や「人の心の察し」の美徳を守りつつ、世界に向かって自らの知性と徳性を発信できる人物こそが、真の世界的教養人、そして愛と光の使徒であろうと思います。みなさんの目前にあるチェインジ&チャレンジに臆することなく、敢然と立ち向かってほしいと願っています。

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