国際交流行事

(2011/02/15)台湾・道明中高訪問を終えて

中2c組担任 栗林政貴
 昨年末12月23日早朝に松山空港を出発,伊丹から関空を経て一路台北へ向かい6泊7日の訪問をスタートさせました。
 ホアン理事長・尾崎先生と私の3名で引率しました。 愛光生16名。これが初飛行機。初海外という生徒もいました。
 4時間の空の旅。時差は1時間であることからも,感覚は国内旅行+αの様でした。
 生徒たちには事前に,「愛光生として訪問というよりも日本大使のような気持ちで臨みなさい。そのために日本のこと,松山のこと,愛光のことをきちんと語ることができるように努力しよう。また,台湾の文化・風習・言葉に大いに触れるため,積極的に発言をするよう」に指導して参りました。
 機内では慣れない中国語放送に始まり,英語,日本語と続き,隣の席には外国の方が搭乗されるなど,既にここから国際交流は始まっておりました。
 台北に降り立つと気温24℃,蒸し暑さを感じる温度ですが,強い風が心地よく感じられるなど,天候には,その後も終始恵まれていました。
 台北から高雄の左営駅まで日本製の新幹線で約2時間。校長先生はじめ約20名近い先生方,神父様たちの手厚い歓迎に触れ,その夜は歓迎パーティーに出席,1日目は夜10時に道明の管理の厳しい寮に入り,12時頃就寝しました。2日目,朝7時30分から学校スタート。朝礼での歓迎式典で中学生約2500名の熱烈歓迎を受けました。「こんにちは」「おはようございます」など積極的に日本語で話しかけてくる生徒たち,大歓迎の中,16名の愛光生は緊張した面持ちでした。2日目も寮に宿泊し,3日目から生徒たちはホームステイを経験しました。
 この滞在の中で,工作・武道・英語・音楽・美術などの授業に参加し,盛大な学校行事として歌唱コンテスト・文化祭・クリスマスミサなどに参加しました。どの教室でもどの場面でも熱烈に歓迎を受けました。そのことからも分かるのですが,道明の生徒たちは日本にとても興味を抱いており,日本で流行していることや,台湾国内で有名な日本のアニメ・映画・日本人のことを話したり,聞かれたりしました。「松山と言えば,映画『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)のモデルとなった道後温泉がありますよね。」と言われたこともありました。また,それ以外にも日本文化が浸透している様でした。物価は日本の約3分の2。道路には日本の最新の車が多く,日本料理店などが目につきました。日本の物は高級ではありますが,ちょっとした気配りや精密な点で愛用している方が多くいました。また,昭和時代の古い日本車が排気ガスを撒き散らして走ってもいました。日本の統治時代,国民学校の授業で日本語を学んだおじいちゃんおばあちゃんに出会う機会もありました。また,日本軍の駐留時に,軍人が稽古を積んでいた柔道場・剣道場などが今もなお保存されていました。とても親日的であったことが印象的です。
 台湾の最近のパワーを感じることといえば,到る処で道路工事・マンションが建築中であるなど建設ラッシュであったことです。また,田舎町に行くと,市場があり,そこを車で通り過ぎようとすると,近づいてきて「これを買ってくれ」と迫ってきます。車の窓を開けると手が入ってきて「ワアワア」言ってきて買うことを迫ってくる。都市の街並みを歩いていると近代的なビルの横には薄暗い雰囲気の怪しげな路地が沢山あり,洗濯物が干され,野良犬がいました。角には屋台があり,これを買ってくれと迫る。きれいなところとそうでないところの差が人々の奮起するエネルギーになっているようにも感じられ,国の勢いを感じました。台湾の国民性もあるとは思いますが,人々は,かつての日本が持っていたようなエネルギー・逞しさみたいなものをもっており,それが街や人,さらに道明中学高校生からも感じられました。
 今回,高雄市役所を表敬訪問する機会を道明中が作って下さり,教育局副局長と面会しました。「台湾は日本をはじめ,アジアの国々と交流を持ちたいと考えている。高雄は造船・鉄鋼業を有力産業としているが香港や上海などのように観光にも力を入れたい」というお話がありました。
 高雄のPRビデオの中に,愛光と道明の交流の映像も流されました。生徒たちは「日本大使」の役割を肌で感じた出来事でもありました。
道明生は,5500名。文化祭・歌唱コンテスト・クリスマスミサなどの学校行事に参加しましたが,「自己表現を育成する」ということにとても力を入れていました。それに先生方が積極的に関わり指導していく。生徒会は自治活動が盛んで,約10名ずつの班を結成し,ボランティア班・美化掃除班・写真班・クリスマスイルミネーション班などがあり,班対抗のコンテストで順位を決め,校内表彰を行っていました。また,掃除班などは優勝班の生徒は週末,私服で登校できるなどの特典を設け,やる気を出させていました。他にも制服班というのがあり,服装チェックを自分たちで行い,生徒同士で注意喚起していました。あと交通整理班。朝夕の校門前は大渋滞になることは知られていますが,その交通整理も班で実施していました。
 話は変わりますが,台湾の中学・高校には陸軍の軍人さんが教官として赴任しているそうで,いわゆる生徒指導は教官を中心に行われています。道明には約10名の軍関係者がおり,朝礼や集会などの司会。交通整理,不審者への対応などにも追われていました。因みに寮の管理も教官がされていました。厳しいだけでなく,とても人間味あふれ,生徒には大変慕われている方ばかりでした。
 道明の中には教室が多数ありましたが,中でも目を引いたのは「葡萄教室」と言っても柔道ではなく,食べ物の「葡萄」です。宗教科の方針として生命教育。生き物を育てるということを大事にするという精神を涵養することの一環として,教室で葡萄を栽培しておりました。学校の方針としてか,ボランティア活動には力を入れている様でした。あらゆる所にキリスト教の精神が生かされていました。中でも良かったのはクリスマスミサです。本校のクリスマス祝会とは規模が違い,高校生だけでなく保護者も参加。キリスト教信者もそうでない人も一斉に集い,日々の感謝,友人や先生,家族でクリスマスを祝った後,文化祭が始まりました。自然の恵みや命を見つめ,感謝する厳粛な日となりました。
 一般の教室の特徴と言えば,マイクで授業をしている人もいました。数学の授業を拝見する機会も得ましたが,レベルは日本と変わりません。計算力を鍛えること,グラフの分析の仕方や統計学を学ぶなどの特色もありました。進度も日本とあまり変わらないものでした。外国語の授業は英語はもちろん,ドイツ語やスペイン語の授業がありました。日本から中国語を学びたいと道明に留学している日本人学生もいました。その生徒は日本語・英語・中国語・スペイン語・イタリア語を勉強したと言っていました。他にも3ヶ国語ぐらい喋れる生徒は沢山いました。
 今回の訪問の最初から最後まで,私達のために,日本人の道明生が通訳やいろいろなことのお世話係としてついてくれました。寮での寝泊まりも含め,とてもお世話になりました。愛光生は同じ日本人でありながら,彼ら道明生がとても積極的でしっかりしていること,語学の勉強をしっかりやっていることなどに大きな刺激を受けたようです。もちろん自分の英語力を試したり,日本の良さを見直す機会も得たようです。特に現地の上水道の水は濁っており,普段からきれいな水を飲み慣れた日本人には飲めません。また,夜市には屋台が多数あり,豚や鶏の丸焼きがそのまま店先に置かれていますし,蛇も食材として調理してくれるなど,食文化の違いを素で感じた次第です。お腹の胃の胃文化交流も大変でした。
 生徒たちは,日本を出て,台湾での生活を経験しました。日本語や学んできた英語でさえも通じないような国での経験と人々との出会いは,彼らを逞しくしたに違いありません。台湾に志のとても高い同世代の人々がいることに刺激を受けました。きっと一生の財産をなることでしょう。
 高雄を離れるその日,駅のトイレにパスポートを鞄に入れたままそれを置き忘れ,危うく帰国できなかった生徒がいて,駅のど真ん中で叱ったり,観光地で4人乗りの自転車で事故をして叱り飛ばしたり,肝を冷やす場面もありましたが,引率した私も,とても楽しい充実した想い出とともに,台湾のパワー,また日本の在り方のようなものを感じられた次第です。今後愛光での教育に生かしていきたいと思っています。とても良い機会に恵まれたと感謝しております。
 訪問後,アンケートをとりましたが,16名中,16名が今後も愛光と道明の交流を続けた方が良いという強い解答がありました。引率した者としても是非継続して欲しいと思います。今後の参考にして頂ければ幸いです。
 今回の訪問を企画し,機会を与えて下さった愛光に感謝するとともに,お世話になった道明関係者,またJTB等すべての関係する方々に感謝します。
 最後に,今回の訪問の際,松山市より松山のお土産を頂き,道明・ホストファミリー・高雄市にお渡ししました。その返礼として,2月10日(木)放課後,訪問生徒を連れて松山市長を表敬訪問することも併せてご報告します。市長はその2日後に台湾訪問予定とのことです。以上で終わります。

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