過去のチュータのひとりごと

(2018/03/11)チュータのひとりごと 第553回(卒業式 式辞(2))

 平澤氏はさらに,祈りの効果について,

――「ぼくは『科学は祈りなり』と思っている。よく勉強していない学者は分かったことだけでものをつづりたがる。それは一を知って十を知らないからである。たとえば,今まで病の床に寝ておった人が歩きだしたとする。多くの学者はそんなのウソだとすぐ言いますが,世界的な学者ハンス・セリエが唱えたストレス学説によれば,それは可能です。非常な感動を受けた場合は,ホルモンなどの内分泌系が変わるのです。」――

と述べたことが伝えられています。(「人は何のために『祈る』のか」という書籍(村上和雄・棚次正和共著)で紹介されています。)

 これは,祈りには不思議な現象が伴うことがあり,他者のための祈りが,このような奇跡的結果を生むということに触れているのです。

 心境としては,「感謝の中で人事を尽くし,祈りの中で天命を待つ」ことだと思います。

 祈るという行為は,自分というものを超えたある何物かに,自己を捧げる行為の一つであり,その時に,自分の持てる最高の力が発揮できるのではないでしょうか。

 ここで,皆さんの18年間を振り返ってみると,世界には何千万人もの未就学児童がいる中で,このようにして勉学やスポーツに打ち込む機会を与えられてきたと言えます。

 まずは今日,そのことを感謝し,恵まれた者としての祈りを捧げていただきたいと思います。

 皆さんは卒業後も様々な人生経験を積み重ねていきますが,あらゆる場面で,他に対する感謝と祈りの心を忘れないでください。感謝と祈りが人生をより豊かにし,運命を大きく切り替えることにつながるのだと申し上げておきます。

 その実例の一つとして,アフリカのザンビアでボランティア医師として活動している本校44期卒業の三好康広さんについて紹介しましょう。

 三好さんは,愛光在学中からボランティア活動に取り組んでおり,卒業後,長崎大学医学部に進学しました。アフリカで医師として活動するきっかけは,学生時代,旅先のケニアで体調を崩した際,スーダンの難民男性の自宅で介抱されたことでした。三好さんはこのことに感動し,いつか,恩返しをしたいと考えるようになったそうです。

 大学卒業後,長崎で勤務医をしていた時に,ザンビアの医師不足を知り,2016年7月からボランティア医師として無報酬で活動しています。

 難民男性に助けてもらったことへの感謝と,医療向上への祈りを捧げながら,医師も設備も不足する中,産科医として頑張っています。その活躍ぶりは,テレビや新聞でも紹介されました。

 このような活動こそが「愛と光の使徒」と呼ぶにふさわしいのではないかと述べて,餞の言葉とします。

 

 今回の「卒業式式辞」でもって,平成29年度の「チュータのひとりごと」を終了します。

 来年度は4月15日(日)に開始する予定です。

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