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「ほんのくらくら」44号より

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「ほんのくらくら」は,愛光学園図書館の別働隊。本好きの生徒と館長が発行する,本好きの,本好きによる,本好きのための広報誌(プリント)です。
今年度最初の号である44号の主要記事を紹介します。

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42号で,「本について」 をテーマとした文章 (散文,韻文,何でもOK) を募集しました。寄せられた原稿を掲載します。ご意見があれば,お寄せください。また,それ以外の原稿もお待ちしています。

「ライトノベルについて」 

芥川龍之介や夏目漱石とかの有名な文豪よりも人気で,多くの人々に読まれ愛される本が,近ごろ多く産出されるようになった。
これらの本はまとめてライトノベルと総称され,この愛光学園でも多くの人が読んでいる。内容は豊富で,SF,恋愛,冒険,学園etcだ。昔,夏目漱石の 「吾輩は猫である」 が多く出版されたように,ライトノベルの中には240万部売れたものもある。
もはや文豪たちの作品は故人の作品にすぎず,どんなに何度も読んでも,そして待っても次回作は出ないし,今読むべき名作もその中のほんのわずか,あとは日の光も望めないものもある。たしかに彼ら文豪の腕は超一流で,読む人に涙を与えられるものもある。だが,故人となっては彼らの腕も意味がない。時代は変わるのだ。故人は若者に未来を託し,若者にその作品を残した。その作品を読み,また若者が作品を書く。ライトノベルを読んでいることは,普通の小説を読むことと大して変わらないのだ。
だが今の大人たちはそれを重視していない。その理由は明確で,ライトノベルの特徴は表紙の絵にある。それを見るなり,漫画と同様視する。有名な絵師たちが描くイラストはたしかに漫画のように見えるかもしれない。だが読みもせずに,目をそむけないでいただきたい。
ある歴史教師は手にとって見るなり苦笑を漏らし,国語教師は 「いいかげんにやめろよ」 の一言。数学教師は鼻息一つで去る。開いて読みもしない。どんなにくだらないように思える本でも,一読してから判断するべきだ。
愛光生よ,今あなたの目の前にはそうした教師もいる。しかし,頭だけの大人に負けないでほしい。ライトノベルもちゃんとした本であり,皆に愛されている。そのことを信じてほしい。そしてこんな種類の本もあるということも知ってほしい。
(高Ⅰ生 K氏)
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「キュリー夫人伝」 (白水社 エーヴ・キュリー)

ああ! 女子学生の青春は 早瀬のようにすぎていく
まわりの若者たちは つねに新しい情熱で
安易な楽しみに 走るばかり!
孤独のなかで
彼女は生きる 手さぐりしながら けれど幸せに満ちて
屋根裏の部屋で 思いは燃え
心ははてしなく 広がっていく......
やがてその恵みの日々も終わり
科学の国を 去るときがくる
日々のパンを 勝ち得るために
人生の灰色の道を 行かねばならない
......そしてしばしば 悩み多い魂は
あの屋根のもとに 帰っていく
いつまでも 変わらずたいせつな 心の部屋に
そここそ ひとりひそやかに挑み その身を鍛えつづけた場
今もあざやかな いくつもの思い出にいろどられた世界......
ワルシャワで生まれ育ったマリー・スクウォドフスカ (後のキュリー夫人) は,高校を卒業後6年間,住み込みの家庭教師をしながら,姉のブローニャがパリで医学を学ぶ手助けの仕送りを続けた。そして6年後,ブローニャが卒業すると,今度はマリーがパリに出て,ブローニャの援助でソルボンヌ大学の学生になる。
24歳で大学生になったマリーは,安アパートの屋根裏部屋で,取り憑かれたように猛勉強を始めた。
食事を作る時間,食べる時間も惜しんで,1日机に向かいつづけ,餓死寸前で倒れたこともある。
ランプ代を節約するため,毎晩10時までは近くの図書館で勉強。アパートに戻ると,2時3時まで勉強。翌朝は7時半に起きて大学に。
大学では誰よりも熱心に受講し,ノートをとり,実験し,教授とのわずかなおしゃべりで気分をほぐす。
そして再び図書館へ,アパートの屋根裏へ。
上の詩は,そのころ彼女がノートに記したものだ。後の自分が,今の自分を振り返る構図ともとれる。

キュリー夫人は,夫のピエール・キュリーとともに,女性として初のノーベル賞 (物理学賞) を受賞し,さらには夫亡き後,ノーベル化学賞も受賞。1人で2度ノーベル賞を受賞した唯一の人となる。
長女のイレーヌとその夫もノーベル化学賞を受賞。一家4人で5つのノーベル賞をもらった。
この伝記を書いた次女のエーヴはピアニストである。
心打たれるのはマリーの生き方だ。晴れやかな経歴を誇ることなく,どんなときにもつつましやか。特許でお金を得ることを勧められても一顧だにしない。
「お金は食べるだけあればもう十分。私は生涯,科学のしもべであり続けるつもりよ」,彼女は娘たちにそう言い続けた。
栄光のさなかにあったあらゆる人々の中で,あれほど閉ざされた表情と,その場に心がないかのような雰囲気を見せた人は,たぶん他に誰もいなかった。嵐のような喝采の中で,あれほど孤独に見えた人は,他に誰もいなかった。
娘のエーヴに映った母親の姿である。
(図書館長)


2013年1月

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