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チュータ日誌

チュータのひとりごと 第304回(陰徳を積む(2))

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陰徳を積む(2)※先週の続きです

 

このように,世の中には目に見えないものが目に見えるものを動かしているのではないかと思われる現象がたくさんあります。目に見えない空気を吸ってわれわれが活動していること,目に見えない電気が電車を動かし,目に見えない月の引力が潮の満ち干を起こすなど数え上げたら切りがないほどです。

われわれの人間生活も,実は,目に見えないものが,目に見えるものを動かしているのではないかとわたしは考えています。

誰にとっても,最も近い家族という点から,そのことを考えてみたいと思います。

家族の姿は目に映るのですが,家族という絆は目には見えません。それでは,この絆はどのようにして結ばれていくのでしょうか。

絆は目に見えない言葉によって結ばれます。家族のお互いがかける思いやりのある言葉,やさしい言葉,温もりのある言葉が絆を深めていきます。逆に冷たい言葉,人を切る言葉,ののしる言葉などが続けば,家族関係はねじれてきて,ギクシャクしたものになります。言葉は目に見えませんが,この言葉によって,これも目に触れることのない感情というものが湧いてきて,それが人の表情,つまり人の姿に表れ,他人の目にはっきりと映るのです。

「ありがとう。」「ご苦労様。」「よく頑張っているね。」「おかげで助かったよ。」などという温もりのある言葉が温もりのある家庭を築いていき,そして,その目には見えない温もりが家族一人ひとりの表情になって他人の目に映るものなのです。

夫婦の会話,親子の会話,子供どうしの会話という,目に見えないコミュニケーションが,その家庭の雰囲気を決め,その雰囲気が目に見える家族の姿となって現れます。家族がお互いに声をかけ合うとき,たとえ近い関係と言えども,言葉とその言葉を発する感情に配慮が必要なのです。つまり家族の中の心遣いが大切と言えるでしょう。

次に,目に見えない陰徳,つまり陰で積み重ねる精神的・道徳的にすぐれた品性や人格について触れてみましょう。

人間は個々の徳分の程度によって,人生がうまく進んだり,うまく進まなかったりするのではないかと思うことがあります。

それでは徳はどのようにして積めばよいのでしょうか。徳の積み方は単純明快,人に喜んでもらうことです。人がどのようにしたら喜んでくれるだろうかと考えて実行できる人は徳を積むことになります。これに対して,人が苦しむことや,恨みに思われるような行為をする人は,自らの徳を減らしていることになります。日常生活の中で,積み重ねられた徳分と減じられた徳分のプラス,マイナスで人生が変わってくるのではないかとわたしは考えています。余れば返す,足らねば差し引くというのが天の差引勘定ではなかろうかと思うのです。

 徳分を深める行為は,われわれの日常生活のあらゆる場面に,つまりすぐ身近に存在します。その行為は誰にも見られていないかも知れませんが,実は神様はきちんと見てくださっているのです。筑波大学名誉教授の村上和雄氏や「人類を救う哲学」の著者である京セラの稲盛和夫氏,同じく哲学者の梅原猛氏が唱える「サムシング・グレイト」(何か偉大なるもの)が見ていてくれるのです。誰も見ていないところで人様に喜んでもらえる行為をする,それが陰徳を積むということです。

たとえば,教師が生徒と面談を重ねて,生徒との信頼関係を築き上げていくこと,昼休みに廊下に机を出して,生徒と言葉を交わしながらノートチェックを行うこと,放課後に文化部や運動部の顧問として生徒と接していること,トイレを生徒と一緒になって綺麗に掃除すること,家に帰って翌日の授業準備を徹底してすることなども,どちらかというと人の目に触れにくい行為であろうと思います。その目に触れない行為こそが,目に見える素晴らしい生徒を育てることにつながるのだとわたしは信じています。

初代校長田中忠夫先生による本校の建学の精神とも言うべき「われらの信条」に記されている「世界的教養人」,そして聖ドミニコの理想とする「愛と光の使徒」の大切な資質の一つは,このような陰徳を積む行為ができることだとわたくしは考えています。

同窓生のみなさん! 聖カタリナのCharity for your neighbors 「隣人愛」 そしてアインシュタインのWe exist for our fellow-men.「人間は他人のために存在する。」という「人の喜ぶ姿を先に見る。」ことのできる人間を共に目指そうではありませんか。


2013年1月

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