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チュータ日誌

チュータのひとりごと 第360回(「よき家庭」への投稿)

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「よき家庭」への投稿

 昨年の11月に「日本カトリック連合会」から,中四国カトリック連盟(中四国カトリック学校加盟の組織名)に対して,「よき家庭」に寄稿してほしいという原稿依頼があった。早速,連盟に加盟している学校の校長先生方に依頼をしたのだが,結局,わたしが書かせていただくこととなった。

 これまでに発表している原稿でもよいということで,以前に「チュータのひとりごと」に掲載した「一杯のみそラーメン」に少し加筆することにした。

 「よき家庭」の発行部数は73,000部とかなり多く,日本全国のカトリック学校の生徒たちに配布されるので,「一杯のみそラーメン」の当事者である同窓生に,原稿を掲載する許可をもらおうと思って連絡を取った。

 電話のやり取りの中で,彼がT大学の理系に在籍しながら,司法試験に合格した話があった。「原稿に君との思い出話を書きたい。」と申し出ると,快くOKを出してくれた。

 完成した原稿を「カトリック連合会」にメールで送付させてもらった。

 本校のご父母には,毎年,3月の郵送物に封入して送付することになっており,送付される直前にわたしの手元に「よき家庭」109号が届いた。

 目を通していると,何となく違和感のある文章になっている。不思議に思い,原稿をチェックしてみると,ある一文が抜け落ちていることに気が付いた。

 再度,その原稿を掲載してみよう。

 

「一杯のみそラーメン」

愛光中学・高等学校 校長 中村道郎

わたしは,東京都の町田市にある学校に英語科の教員として赴任し,同時に,塾舎監を兼務しました。この塾とは学習塾のことではなく,学校寮のことを指します。その後4年間,生徒と共に寮生活を送りながら,昼だけではなく,夜も学習指導や生活指導を行うという文字通り24時間,生徒と共同の生活をおくりました。また,寮生と豚や羊の飼育,畑の開墾など,現在では到底考えられないような貴重な体験もしました。この経験が今のわたしの教育理念の一つ,「師弟同行」の原点になっていると言っても過言ではありません。

 この寮生活で,毎日,生徒と朝食や夕食を共にしたのですが,そういうなかで,生徒と語り合うことの素晴らしさを味わえたと考えています。

 わたしが愛光中学のクラス担任をしたときの思い出,「一杯のみそラーメン」の話をしましょう。

―― ある日,担当学年の生徒の一人が横にやってきて,「先生,相談があるんです。」と少し心配そうな顔をして言った。「よし,今度ラーメンを食べに行こう。」と言うと,きょとんとした顔をしている。「なんだ,ラーメンは嫌いか。」と言うと,「いえ,そんなことはありません。」ということで,土曜日に,いっしょにラーメン屋へ行くことにした。

約束通り,土曜日の午後,車に乗せて,ラーメンのおいしい店へ連れていった。わたしが大好きなみそラーメンを注文すると,彼も同じ品を注文した。

彼は,車に乗ったときから,故郷や家族の話などをしていたが,店に入っても,別に彼の「相談」はない。店の中でも,学校での面白い話や,楽しい話が続いた。結局,ラーメンがおいしかったということで,彼との話は終わった。

その後,彼の表情から心配そうな様子は,全く消えてしまった。ラーメン店では,世間ばなし以外の話は何もしなかったのに,である。ただ一杯のみそラーメンを食べたに過ぎない。まるでみそラーメンに心配事を解決してもらったようなものである。

高校の卒業式の日,高Ⅲの担任の先生から,「職員室に挨拶にいきましたが,不在でしたので, お世話になったと伝えてください。」という,彼の伝言を受け取った。――

という話です。

彼はT大学の理系コースを卒業したのですが,在学中に猛勉強した結果,司法試験に合格して,現在弁護士として,元気にやっているという電話が最近ありました。

もし,わたしが寮生活で生徒と共に食事をするという経験をしていなかったら,生徒を食事に連れ出すということは思いつかなかったでしょう。「同じ釜の飯を食う」行為が生徒の心を揺さぶるのだと思います。

また,わたしは生徒を食事だけではなく,温泉に連れて行き,心を込めて背中を流した経験も幾度かあります。背中を流すという行為は,生徒との信頼関係を築く最も良い方法だと考えています。

教育現場では,生徒の感動を呼び起こす強い情熱が教師の側にあるのかどうかということが,常に問われているのではないでしょうか。

「生徒に対する心遣いや行動は,いつか必ず生徒の心に届く。」と信じて教育現場に立っています。

 

 4か所の□で囲んだ文とダッシュが抜け落ちているために,「ですます体」から「である体」に突然変わったことに違和感を覚えるのである。

 さらに,驚いたことに,名前の振り仮名が「なかむらみちお」になっている。正確には,「なかむらみちろう」である。

 最初のうち,驚きを禁じ得なかったのだが,よく考えてみると,原稿の名前には,振り仮名をふっていなかった。いつも,「相手の立場に立って物事を考えることが大切だ。」と述べている自分が,原稿をチェックする担当者に思いが至らなかったことに気付いた。

 また,途中,「ですます体」から「である体」に変えていることに注意をしてほしいと申し出るべきであったと,心遣いの足りなさを反省した。

 今後,原稿を依頼された時に,チェックする立場の担当者に迷惑をかけないよう心すべきだという気持ちを強くもった。


2013年1月

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