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チュータのひとりごと

チュータのひとりごと 第209回 卒寮式挨拶

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 卒寮式の挨拶を掲載いたします。

高3寮生の皆さん,卒寮おめでとうございます。

「同じ釜の飯を食う。」これが寮生活の最高の経験だとわたしは考えています。

わたしは,東京町田の玉川学園に英語科の教員として赴任しましたが,同時に,塾舎監を兼務しました。 塾舎監は,愛光では寮の舎監にあたります。その後4年間,生徒と一緒に寮生活を送りながら,昼だけではなく, 夜も学習指導や生活指導を行うという文字通り24時間,生徒と共同の生活をおくりました。また,寮生と一緒に,豚や羊の飼育, 畑の開墾など,現在では到底考えられないような貴重な体験をしました。この経験が今のわたしの教育理念の一つ,「師弟同行」 の原点になっていると言っても過言ではありません。

この寮生活で,毎日,生徒と朝食や夕食を共にしたのでありますが, 食事を共にしながら生徒と語り合うことの素晴らしさを味わったと考えています。

わたしが中1のクラス担任をしたときの思い出,「一杯のみそラーメン」の話をしたいと思います。

これは「チュータのひとりごと(第4回)」に掲載している文章をそのまま紹介するものです。

 

中学の担任をしていた頃の話である。ある日,担当学年の生徒の一人が横にやってきて,「先生, 相談があるんです。」と少し心配そうな顔をして言った。「よし,今度ラーメンを食べに行こう。」と言うと, きょとんとした顔をしている。「なんだ,ラーメンは嫌いか。」と言うと,「いえ,そんなことはありません。」ということで,土曜日に, いっしょにラーメン屋に行くことにした。

約束通り,土曜日の午後,車に乗せて,ラーメンのおいしい店へ連れていった。 わたしが大好きなみそラーメンを注文すると,彼も同じ品を注文した。

彼は,車に乗ったときから,故郷や,家族の話などをしていたが,店に入っても,別に彼の「相談」はない。 店の中でも,学校での面白い話や,楽しい話が続いた。結局,ラーメンがおいしかったということで,彼との話は終わった。

その後,彼の表情から心配そうな様子は,全く消えてしまった。ラーメン店では, 世間ばなし以外の話は何もしなかったのにである。ただ一杯のみそラーメンを食べたに過ぎない。 まるでみそラーメンに心配事を解決してもらったようなものである。

高校の卒業式の日,高Ⅲの担任の先生から,「職員室に挨拶にいきましたが,不在でしたので, お世話になったと伝えてください。」という,彼の伝言を受け取った。

という話です。

 

彼は東大の理系を卒業したのですが,その後司法試験に合格して, 現在元気にやっているという電話が先日ありました。

もし,わたしが寮生活で生徒と共に食事をするという経験をしていなかったら, 生徒を食事に連れ出すということは思いつかなかったでしょう。「同じ釜の飯を食う。」ことから得たヒントを応用したのが, この出来事でした。

皆さんが,これから,人生経験を積んで,人を指導する立場になったときに,ぜひ, 同僚や部下と食事を共にしながら,話をしてみるとよいと思います。必ず良い結果が出てくることでしょう。また,わたしは, 生徒や子どもを温泉に連れて行って,背中を流した経験も幾度かあります。背中を流してもらって心を動かさない人間はいません。 皆さんが将来結婚し,子育てをする中で,時に試してみてください。親子の間の信頼が必ず生まれると,これは,断言しておきます。

中学・高校で,寮生活を体験できたこと,これを宝として,自分の人生に生かしてもらいたい, 生かしてこそ寮生活の意味があったのだと申し上げて,卒寮式の挨拶といたします。

 

お知らせ 今年度の「チュータのひとりごと」 は今回で終了です。来年度は4月13日(日)から開始いたします。

2013年1月

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