チュータ日誌

(2018/06/20)放射線治療医の本校OBからのメッセージ

グレートトラバース物理通信から転載

昨年度、物理担当のY先生が、物理選択の高三生にむけて「グレートトラバース物理」という名前の教科通信を配布しておられました。

その中に、放射線治療医をされている卒業生からのメッセージが掲載されていましたので、チュータ日誌をご覧になっている在校生・保護者の皆様にもきっとご参考になるかと思い、以下に転載させていただきます。

 

放射線治療医をしている卒業生より

初めまして。今回、縁あってグレトラ通信に一筆書かせていただくことになりました○○といいます。

医者になって十数年、そろそろ中堅どころといった感じでしょうか。今私は東京で放射線治療医として日々がん患者さんの診察・治療にあたっています。

 

私の専門の「放射線治療」と聞いてもどんなことをやっているのかいまいちピンと来ない方が多いと思います。

ドラマで取り上げられるのは外科医ばっかりですもんね。

がんを切って治すのが「外科医」、

抗がん剤を使ってがんを抑えるのが「腫瘍内科医」、

放射線を使って切らずに治すのが「放射線治療医(放射線腫瘍医)」です。

がんの種類やステージによっては私たち放射線腫瘍医が治療の主体となることもあるんですよ。

 

私が放射線治療医(腫瘍医)になった理由

私が放射線腫瘍医になろうと決めたのは医学部6年の時点でした。みなさんご存じの様に日本人の死亡原因の1位はがんであり、今後もどんどん増え続ける一方です。

日本人の2人に1人が罹患し、3人に1人の死因となるがんの克服は国民的な課題です。このがんの治療に携わりたいと思いました。

 

がん治療には、手術化学療法放射線治療の3本の柱がありますが、手術と比較して放射線治療は、

① 形態・機能を温存した治療が可能である、

② 高齢者や合併症のある患者の治療が可能である、という特徴を持っています。

 

日本では長らくがん治療の中心にいたのは手術でした。

しかしこれらの特徴を有する放射線治療を望む患者は徐々に増加しており、1995年には放射線治療を受けるがん患者は15%程度でしたが、2010年には30%と倍増しています。

さらに今後もこの傾向は続くと考えられます。

 

特徴①に関して、実例を挙げておきます。

声を出す器官である「声帯」にできる「喉頭がん」を手術で切除してしまうと声が出せなくなってしまいますし、腫瘍の大きさによっては嚥下機能にも障害が出る場合もあります。

   ※嚥下(えんげ)・・・食べ物を飲み込み胃まで運ぶ動作

 

しかしこのがんを放射線治療(化学療法を併用することもあります)で治療できれば、声や嚥下機能を失うこともないでしょう(もちろん放射線治療独特の後遺症はありますが)。

このように放射線治療はQOL(Quality Of Life) を維持しながら がんを治癒に導けるという大きな利点を有しています。

また特徴②に関しても、今後も高齢化の波は進んでいくことは間違いなく、放射線治療には大きな期待が寄せられています。

 

 

まとめると、将来のがん治療において放射線治療は不可欠なものであり、それを担う放射線腫瘍医の需要は高いということです。

そして付け加えますと供給は不足している、つまり放射線腫瘍医はまだまだ少ないのです。少ないということは早くその分野の中心的役割を果たすこととなり、責任ももちろんありますがやりがいのある仕事であるといえるでしょう。

 

これが、私が放射線腫瘍医になろうと思った理由、ということになります。医学を志すみなさんに何かしらの足しになればと思います。ではまた。

 

さいごに

記事を提供してくださったY先生、メッセージを下さった卒業生の方、どうもありがとうございました。

医学部への進学を希望している生徒だけでなく、多くの人に参考になったのではないでしょうか。グレトラ物理通信は、年間で100号にも渡り、Y先生の汗と涙の結晶とも呼べる大作ですので、よろしければ、また記事を紹介させていただければと存じます。

写真2枚目、3枚目は、「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」より引用させていただいたもので、卒業生の方とは関係ございません

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