チュータ日誌

(2018/09/12)物理学科に進学した先輩より(グレトラ物理)

以前のチュータ日誌でご紹介した、物理担当のY先生による物理の教科通信「グレートトラバース物理」から、またまた優れた記事をお借りしました。

グレトラの以前の記事はこちら

今回は、東京の私立大学の物理学科に進学した先輩から、現役生へのメッセージです。

物理学科に進学しようと思っている人だけでなく、物理学科って何だろう、と思っている人も、いまはあまり興味の持てない人も、ぜひぜひ参考にしてください。

 

物理学科の先輩からのメッセージ

 皆さんはじめまして。おそらく多くの人は、物理学科というと、天文だとか素粒子だとか、あとは、量子力学の研究をしている学科だろうとお思いになっているでしょう。実際、私も入学するまではそう思っていましたし、これらの分野の研究は目立ちますからね。

 

ですが、今回は、物理学科での研究はこれらだけでは無いよ、と伝えたいわけです。これ以外の分野として、必ずどこの物理学科にもあるのは、統計物理(統計力学)の研究室と、固体物理の研究室です。

あとは、生物物理の研究室や、数理物理の研究室などもあります。

 

分類の仕方は、大学によって様々であり、同じ学問の研究をしていても、扱うテーマが異なると分野が別になる場合もあります。例えば、「量子力学」といっても、量子コンピューターへの応用を意識して研究していれば、「量子情報」に分類されますし、固体中の電子の量子状態を研究するのであれば、「物性」に分類されたりします。

 

 まあ分類は置いておいて、各研究室がどういった研究をしているかについて、すこし紹介しましょう。

 

「天文」についてはご存知のように、宇宙についてです。

ただ、宇宙についてと一口に言っても、2パターンあります。惑星の進化についての研究と、宇宙そのものの進化についての研究です。

 

 

素粒子」については加速器実験をしたり、宇宙線の観測をしたり、ダークマターの探索を行ったりします。加速器実験については新素材の開発を行っている場合もありますが。ちなみに、原子核内の物理については「原子核物理」という分野になり、この分野の研究室は、たいていの物理学科にあります。

 

 

量子力学」の研究室では、量子情報の研究を行うなどしています。

 

統計物理」とは、粒子が集団として集まった時のふるまいに関する学問ですが、これは大学によってさまざまです。例えば、気体の性質について論じたり、金属の磁性について論じたりします。では研究室での研究はというと、低温物理と呼ばれる、低温状態での金属について研究する所もあれば、非平衡物理と呼ばれる、安定でない系の変化についての理論を研究する所や、データの統計を取って物理現象に通じる性質(スケールフリー性とかカオスとか)を調べる研究室もあったりします。

 

生物物理」は、生体内の事象を物理的視点から見る学問であって、例えば、筋繊維の動きを力学モデルを用いて調べたり、分子動力学計算と呼ばれる手法を用いて、タンパク質の性質を研究していたりします。

 

 

数理物理」は、まあ、数学科の研究室が物理学科に出張してきているもの、ぐらいに思ってください。やっているのは数学の研究です。扱う式は物理に関係のあるものがメインですが。ちなみにこの場合の数学の研究とは、解の存在や挙動を調べたり、近似の仕方を考えたりすることです。

 

おおざっぱになりますが、だいたいこんな感じで物理学科の研究室は分かれています。

 

あとは、全体として理論系実験系に分けることもできます。ただ、分け方は本当にまちまちで、大学院進学のために研究室を探す時も、たいてい、自分が興味をもった分野に関しての「キーワード」(非平衡とか)を用いて調べます。単に学問名で探すと、研究内容が自分の興味のあるものと違う場合もあるので注意が必要です。まあ、これは物理学科に限った話ではないのでしょうが。

 

さて、高Ⅲ生の皆さんは、今の時期だと進学したい学部は決まっている方も多いと思いますが、もし研究したいことも決まっているのでしたら、進学したい大学に、はたしてその研究をやっている研究室があるのか、についてきちんと調べておいた方がよいと思います。

 

そのような研究室が無い場合もありますし、場合によっては別の学部に行った方がいい場合もあるかもしれません。まだ決まっていない人も、気晴らしに調べてみるとおもしろいと思います。

 

以上、皆さんの参考になれば幸いです。

 

写真は、

著作権フリー写真サイト、および、ウィキペディアより

 

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