3月1日(水)に第65回卒業式を挙行したので、式辞の一部を紹介したい。
冒頭挨拶 省略
65期生は、高校時代をコロナ禍の中で過ごしてきました。
特に新型コロナウイルス感染回避のため、高Ⅱの修学旅行を中止せざるを得なかったこと、さらに、高Ⅲの体育大会を完全な形で実施できなかったことを申し訳なく思っています。
ただ、高Ⅱの2学期から新しい校舎で学習できたこと、また、高Ⅲの2学期から新しい体育館を利用できたこと、また短期間ではありましたが、新しいカフェテリアを利用できたこと、さらには希望者ではありましたが、昨日の「創立70周年記念式典」に参加できたことは、高校生活の素晴らしい思い出として残ることと思います。
本日は新しい人生の門出を祝う記念の日でありますので、日頃感じていることを述べ、皆さんを送る激励の言葉にしたいと思います。
タル・ベン・シャハ―氏の著書、「ハーバードの人生を変える授業」の中で彼は次のように述べています。
―― 18世紀ドイツの哲学者イマヌエル・カントは、「道徳的価値のある行為は、義務感から行われるものである」としています。
中略
カントと同様に、「自己犠牲が道徳の源である」とする多くの哲学者は、自分の利益のための行動は、必然的に他者の利益を侵害するとしています。つまり、利己的傾向を押しとどめなければ、他の人を傷つけ、その人たちの望んでいることを無視することになるというのです。しかし、自分の利益と他者の利益のどちらかを選ばなくてはいけないという考え方は間違っています。人を助けることと自分のために行動すること、その2つは密接に絡み合っています。つまり他者の役に立てば立つほど、私たちの幸福感は大きくなっていきます。そして、自分が幸せになればなるほど、さらに他の人のためにも何かしたいと思うようになるのです。 ――
と述べています。
以前にも述べたことがあるのですが、わたしは「人を助けた徳分によって、自らが助かる」という考えを持っています。
タル・ベン・シャハ―氏が他人を助けることによって「幸福感」が増すと述べている、その「幸福感」を「徳分」という言葉に置き換えることができると思うのです。
人間は、他人を助けた幸福感、つまり、徳分によって、自らが助かるように創造されているのではないでしょうか。
積極的に人を助けたいという気持ちになるのは、自らがこの世に生かされ生きているという喜びや、感謝の気持ちを持った時であり、人を助けることによって、助けを受けた相手だけでなく、自らもさらに勇んだ気持ちになると思うのです。結局、このような助け合いによって、この世が勢いのある、明るく勇んだ社会になるように仕組まれているとわたしは考えています。
これは、突き詰めていくと、自分の運命が行き詰まり、八方ふさがりに陥った時には、人を助けることによって、行き詰まった運命を切り替えることができるという考えに至るとも言えます。
昨年度の卒業式式辞でわたしは「宇宙の意志」について触れ、138億年前の宇宙の誕生も、46億年前の地球の誕生も、生命誕生の神秘も、「宇宙の意志」と呼べるのではないかと述べました。
「宇宙の意志」がわたしたち人間に願うのは、「互いに助け合うこと」だとわたしは思います。つまり、「宇宙の意志」は、人間が自分のためにのみ生きるのではなく、人のために生き、さらに自分を超えた何ものかに挑戦することのできる人間、つまり、「愛と光の使徒」を待ち望んでいるのだと述べて皆さんへの餞の言葉とします。
保護者の皆様への挨拶 省略