それでは,皆さんが今後,自分の「志」を実現するのに役立つであろうと思う話をしたいと思います。
筑波大学名誉教授の村上和雄氏は著書「遺伝子オンで生きる」の中で,次のように述べています。
―― 世の中には,いろいろな方面でアッと驚くすぐれた能力を発揮する人がいます。
ものすごく仕事ができる,ものすごく性格がいい,ものすごく力がある,ものすごく絵がうまい,ものすごくスポーツが上手である,・・・・・・そういう人でも,その他大勢より「ほんの少し遺伝子の働きが活発なだけ」なのです。
中略
自分にとって好ましい遺伝子が,人よりちょっとよけいに働いてくれれば,それまでの自分とは違った自分になれる。これは間違いない事実なのです。
そのためには,どうしたらいいか?
長年の遺伝子研究の成果から,遺伝子にはスイッチのようにオン/オフの機能があることがわかっています。
ですから,遺伝子のスイッチ・オンということを考えればよいのです。自分にとって好ましい遺伝子をスイッチ・オンにして働いてもらい,好ましくない遺伝子はオフにして眠らせる。遺伝子オンの生き方とは,遺伝子の能力を自分でコントロールして生きるということです。 ――
このように遺伝子をオンにして生きることの重要性に触れています。
それでは,皆さんは本日入学式を迎えた愛光学園で,どのようにして遺伝子をオンにしていけばよいのでしょうか。
村上氏は「感動,喜び,イキイキワクワクすることが,よい遺伝子のスイッチをオンにする。」と述べています。
昔から「病は気から」と言われているように,心の働きが遺伝子に影響を与えているのではないかということは,わたしたちが何となく理解していることだと思います。このことから,心が「感動,喜び,イキイキワクワク」すれば,よい遺伝子のスイッチがオンになるということも理解していただけるのではないでしょうか。
遺伝子は環境によって目覚めると言われています。
皆さんが両親や祖父母から受け継いできた遺伝子をどう目覚めさせるかということに,この愛光生活でチャレンジしてほしいのです。
本日の入学式は大きな環境の変化の節目です。
今,皆さんの目はやる気に満ちてキラキラと輝いています。
新しい中学生活,そして新たな高校生活の場が「感動,喜び,イキイキワクワク」の場になるかどうか,これが皆さんの今後を決めるキーポイントになります。
良い遺伝子をオンにする「感動,喜び,イキイキワクワク」した学校生活は人から与えられるものではありません。皆さんが学問にそしてスポーツに,さらには学校行事に積極的な態度で臨むことによって得られるものなのです。
これからの3年間あるいは6年間の愛光生活を送る中で,時に自分の愛光生活が「感動,喜び,イキイキワクワク」した学校生活になっているかどうかをチェックしていただき,その都度環境を改善していく努力を続けてくださることを願っています。
それでは,本校の教育について触れましょう。本校では,特に深い知性と高い徳性を磨くことに力を注いでいます。
中略
皆さんは,将来,全員がグローバル・リーダーを目指す人たちです。グローバル・リーダーは,「世界的教養人」そして「愛と光の使徒」でなければなりません。さらに,強い意志力と,人間として最も重要な誠実さと謙虚さを備えた人物である必要があるのです。
皆さんがこれから目指す人間像は,以上の話で何となくイメージできたのではないかと思います。世界のどこの大学に入学しても通用する深い知性と,世界のどの分野に出ていっても恥ずかしくない高い徳性を養うために,皆さんは,この愛光学園に入学したのであります。
東京大学,国公立大学の医学部をはじめとする難関大学に合格するということは,このような人物を目指した結果,手に入る栄冠であってほしいのです。
ここにいる63期生と60期生,一人ひとりが持つ夢や目標は異なりますが,それぞれの世界でリーダーシップを発揮するために,全国から集まった友人を宝とし,共に努力を重ねてくださることを強く願っています。
ご父母の皆様に一言,ご挨拶を申し上げます。
中略
この愛光の丘で,親と子と教師がともに力を出し合い,教育の三位一体が実現できるよう,皆様方のご理解とご協力を心からお願いして,式辞といたします。
平成27年4月8日 愛光中学・高等学校 校長 中村 道郎