過去のチュータのひとりごと

(2016/12/04)チュータのひとりごと 第511回(世界的教養人を育てる 愛光中学・高等学校の取り組み(2))

4 知性と徳性

 それでは,一段と深い知性をどのようにして育成しているのかというと,併設型中高一貫の厳しい学問探求によって養っています。

 知育も徳育も教師の姿勢が生徒に大きな影響を与えることは言うまでもないことです。

 教師と生徒の信頼関係,これこそが生徒の知性や徳性を育む根源だと常々考えています。

 また,徳性は神父様方を中心に,CLE(Christian Life Education)の時間を通して宗教的倫理観を育んでいます。倫理観には世俗的倫理観もあり,この教育には,家庭及び学校にかかわるすべての者が取り組むべき課題です。

 特に中1時には,CLEの時間を週に2時限設定しており,そのうちの1時限は聖堂で聖歌を歌い,聖書を日本語と英語で読んだ後,神父様から解説があります。

 その後,その月の誕生者を「おめでとうたんじょうび」という歌で祝福し,さらに生徒たち向けの講話を行っています。

 この時間を通して,人として踏み行うべき道を伝え,崇高なものを敬う気持ち,お互いを大切にする気持ちを養いたいと考えています。

5 学校教育目標

 学校教育目標として次の3つを掲げています。

ア 学校生活の充実

イ 学力の定着

ウ 公共心の育成

ア 学校生活の充実

 別の表現をすると,個々の生徒が,それぞれに学習や部活動において,充実感を持って生活を送ることができるということです。そのために,面談などを通してきめ細かい指導を行うと共に,家庭との連携を密にし,「親と子と先生」の三位一体で教育を行うことが大切だと考えます。

イ 学力の定着

 本校では,「授業,宿題,自学自習」の三点セットで実力をつけることを目指してきました。

 1日の標準家庭学習時間を生徒たちに明示し,家庭(寮)学習の習慣を身につけさせています。

 また,教科別に各学年の生徒にカリキュラムあるいは到達目標を明示し,達成のための指導を行い,学力の定着を図っています。

 学習到達度は中3から校外模試を実施し,他の進学校との比較を行っています。

 毎回,模擬試験の後に報告会を開き,科目別,さらに設問別に分析し,対策を練っています。

ウ 公共心の育成

 校内外における暴力行為といじめ行為を許さない,見逃さない指導を行っています。

 校内に「いじめ防止対策委員会」を設置し,いじめ問題に全校をあげて取り組んでいます。いじめをいかにして予防するかだけではなく,いじめ行為に指導者が早く気付くこと,発覚した場合に,迅速に対応することに留意しています。

 集団は,指導の手を入れなければ必ずいじめが起こるものだという前提のもとで,アンケート調査等も計画的に実施し,生徒がすぐに教員に相談をすることができるような生徒との信頼関係を普段から築いておくことが大切なことであると考えています。

 生徒の中には,相談が苦手な者もいるので,面談や声掛けを積極的に行うよう努めています。教員の一言が生徒を励ましたり,ひいては生徒を救う一言になることはよくあることです。

 また,生活マナーアップを図ることに留意し,特に挨拶や服装において,礼儀正しさを身につけるよう指導しています。

 こうした指導の積み重ねが,世界的教養人と言える品位のある生徒を育てることにつながると考えています。

 もちろん,世界的教養人を育てる側の日頃の姿勢も重要であり,教職員の良識ある態度,身だしなみ,行動が模範となることが大切であることは,申すまでもありません。

6 進学目標と指導

 本校は進学校であります。現役の数値目標を東大25名,国公立大医学部医学科25名,国公立大100名と定めています。最近の傾向として,国公立大医学部医学科を志望する生徒が増え,東大の志望者が減っているため,この東大の数値目標を達成することが難しくなっています。

 国公立大医学部医学科については,ほぼ,数値目標を達成しており,今後も増加が見込まれます。

全国の医師の1%が本校の卒業生だと言われています。

 特に松山市の救急医療体制が整っているのは,本校卒業の医師のおかげであると感謝していただいています。

 松山市は人口50万の市で,100万都市のように大手の予備校や塾の進出がないので,ダブルスクールは不可能です。

 そこで,先ほど「学力の定着」で触れた「授業,宿題,自学自習」が大切になってきます。都会の進学校の生徒たちが通う予備校や塾に代わる学習も必要になるということです。

英語科の教師であったわたくしは,およそ30年前にこのことに気づき,都会で「ダブルスクール」に通う生徒と競争をするために本校で何が必要かということを考えました。

その結果,「昼休みチェック」という方法を思いつきました。

 「昼休みチェック」では,学校で使う教科書とは別の問題集を生徒に与え,「ダブルスクール」で実力をつける生徒と同様の力をつけようと考えたのです。答えをノートに書かせ,そのノートをチェックするという至って単純な指導方法です。

 ただし,ノートをチェックする時間と場所を工夫しました。職員室でチェックするのではなく,昼休みに学年の廊下に机と椅子を出し,その場でチェックするという方法をとったのです。

 生徒は昼休みに,必ずわたしのチェック机の前を通過しなければなりません。

 わたしは生徒のノートをチェックした後,必ず内容について一つ質問をしました。もし,質問に答えることができなければ,列の後ろに並び直さなければならないので,生徒たちも真剣に答えます。

 冬場は廊下に暖房などないので,大変寒かったことが記憶にあります。

 ある冬,チェックをしていると,一人の生徒が,コップに温かいお茶を入れて,わたしのところに持ってきてくれました。「先生,寒いでしょ。どうぞ。」と言って渡してくれたお茶を飲んで,教師としての「幸せ感」を味わった思い出があります。

 チェックをしながら弁当を食べていましたので,教師も生徒も大変だということで,「師弟同行(していどうぎょう)」と呼んでいました。

本校には,現在も「昼休みチェック」という指導方法を採用している教師がいます。

 生徒が学習しやすい環境を整えるのは進学校の務めです。

 今後,アクティブ・ラーニング及びICT教育への取り組みを考えており,タブレットを用いた授業等にチャレンジし,生徒たちに実力をつけることを課題として掲げています。

 

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