過去のチュータのひとりごと

(2021/03/07)チュータのひとりごと 第652回(63期生卒業式式辞(令和3年3月1日)(2))

 さて,皆さんには人生を歩む姿勢として,「Change & Challenge(変革と挑戦)」という言葉を何度も伝えてきましたが,感性論哲学の創始者,芳村思風氏の「真理は一つという考え方は間違っている」という思想の一部を紹介し,人間は変化の歴史を歩んできたことを述べてみたいと思います。
 芳村思風氏は致知出版社の「人間の格」という著書の中で,
「真理は一つだという考え方は,人間の作為的な,証明されていない前提であって,決して本当の意味で真理は一つではない。
 しかし,人間が生まれて死ぬまでのせいぜい百年ぐらいの間には,自然世界の秩序は変わらない。短いスパンの時間帯をとれば,事実の世界,物体の世界,自然の世界はほとんど変化がないといっていい。その意味では,変化しない世界に対しては真理は一つだという間違った前提を適用してもいいかもしれない。
 しかし,人間の世界は自然の世界のように何百年たっても変わらないという世界ではない。人間の世界は変化を作り出していく世界なのである。歴史とは変化なのである。人間の成長とは変化なのである。心も変化し,肉体も変化し,社会も変化する。まさに変化の世界が人間であり,人間が生きるということは変化をつくり出すことなのである。
 だから,変化する社会の出来事を処理する方法として,真理は一つだという原則を持ち込んではならない。世界は変化しないことを前提にして,はじめて真理は一つだといえるのである。」と述べています。
 宇宙の歴史137億年,地球の歴史46億年,そして38億年前に生命が誕生して以来, 3度の大絶滅という大変化を経ながら生命が受け継がれ,人類が誕生したと言われています。まさしく生物は38億年の間,変化に次ぐ変化を遂げながら,この世に存在してきたことになります。
 「変化しないことを前提にして,はじめて真理は一つだといえる」と考えると,変化し続ける世界には真理や真実が際限なく存在し続けると言えるのではないでしょうか。さらに地球上の生物は,ただ単に変わるのを待つだけでなく,変化へと果敢に挑戦する姿勢を貫いてきた結果,現在の姿があるのだと思います。
 本校卒業後,皆さんの進む道は様々です。どの道に進もうとも,「Change & Challenge」(変革と挑戦) を重ね,さらに,自らが「道」を作り上げる気概をもち,この地球上に足跡を残してくださることを願って餞の言葉とします。

 最後に,コロナウイルス感染防止のために,この席にご参加いただけなかった保護者の皆様に対して,一言ご挨拶を申し上げます。
 本日をもって皆様とお別れすることは寂しい限りでございますが,どうか,ご子息・ご息女の卒業後も,末長く学園の将来を見守り,ご指導くださいますよう心よりお願い申し上げます。
 それでは63期の皆さん,お別れです。愛光学園の卒業生として,聖ドミニコの理想,深い知性に裏づけされた信念と,清い人生観より生まれる高潔な徳性を兼ね備えた「愛と光の使徒」として世界に羽ばたいてくださることを期待し,それぞれの道での健闘と幸福を心よりお祈りいたします。

       令和3年3月1日   愛光高等学校 校長 中村 道郎

 今年度の「チュータのひとりごと」は今回をもって終了いたします。
 来年度は4月11日(日)から開始する予定です。

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