高Ⅲ寮生の卒寮式の式辞の一部を紹介したい。
66期高Ⅲ寮生の皆さん、卒寮おめでとうございます。3月の卒業式で式辞を述べることになっていますので、今日は簡単な挨拶に留めさせていただきます。
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さて、今回の卒寮式、わたしは皆さんに、「気をつけなければならないのは、誠実、謙虚であることを忘れて、傲慢になってはいけない。結局のところ、人間を滅ぼすのは傲慢である」と述べてきましたが、感性論哲学の創始者である芳村思風氏の言葉を紹介しましょう。
―― 人間において、不完全性の自覚から滲み出る謙虚さほど大事なものはありません。よく真善美というが、如何なる素晴らしいものも、その根底の謙虚さを失えば人間的な価値をすべて喪失します。
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それでは、どうすれば謙虚さが滲み出てくるのでしょうか。
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不完全性を本質とする人間においては、それを思い出すだけで穴があったら入りたい、穴を掘ってでも入りたいという気分になってしまうほどのことを自分の中に持つことが人間として当然であり、大切なことなのです。
これはよく内観という方法でなされることですが、自分が小さいころ、お父さんからどんなことをしてもらったか、お母さんからどんなことをしてもらったか、それに対して自分はどんなお返しをしたか、ということを思い出してみるのです。そうすると、お父さん、お母さんにしてもらったことがあまりにも多いのに比べて、自分がして返したことがあまりにも少ないことに気づいて愕然とします。
それだけではありません。その大恩(だいおん)あるお父さん、お母さんに対してひどいことをいってしまったり、悲しませるようなことをしてしまったり、本当にたくさんの迷惑をかけたことが、あれこれ思い出されてきます。
そういうことを実感として思い出してくると、本当に今すぐにでもお父さん、お母さんの前にひれ伏して謝りたい。そういう感じに襲われることがあります。そういう実感を見つけ出して自分の中に常に持っていることが、不完全性の自覚から滲み出る謙虚さを自分のものにする上で非常に大事なのです。——と述べています。
本日の卒寮式にも保護者の皆様が参加してくださっています。ご両親へ、そしてご家族に対して、本日に至るまでのご恩を忘れることなく、感謝の心を持つことがこの芳村思風氏の述べる謙虚さにつながるのではないでしょうか。
今後も、皆さんが誠実で謙虚であることを願っています。
保護者への感謝の挨拶