幼稚園教職員の研修会に招かれて、講話をすることになった。
本校の生徒や保護者、そして、本校受験希望者やその保護者にお話をすることにワクワク感はあっても、緊張感はそれほどないのであるが、この研修会は少々勝手が違っていた。講話の一部を紹介したい。
—— 本日は皆様とお会いできて大変光栄に思っています。
私は、教育の世界は年齢が下がるほど困難を伴うと考えています。幼少期の教育を担当していらっしゃるというだけで、尊敬の念を抱いてしまうのです。
今日は、15分間のお話をさせていただくということで、ワクワクした気持ちでやってきました。「感動、喜び、イキイキワクワク」のワクワクであります。
生徒・教職員、あるいは保護者、そして本校への入学希望者を前にお話することが多いのですが、今日は全く異なった状況の中にあり、少々緊張しています。
さて、さきほど、ワクワクしてこの会に臨んでいると申し上げましたが、中高生の教育にかかわるとき、最も大切なことは、教員が「ワクワク感」をもって授業に臨んでいるかどうかということだとわたしは考えています。
それでは、ワクワク感を持つには、どのようなことをしなければならないのでしょうか。
それは、授業準備の段階で、自分が教えるところをどのようにしたら生徒が理解しやすいかという工夫に時間をかけることです。担当教科の問題を解くことができるのは、それぞれの教科の教員であれば、当たり前のことです。ただ、それだけでは、生徒の心には響かないのです。教科書や参考書に書いていないこと、問題集に書いていないこと、さらに、理解しやすい方法を伝えると、生徒はなるほどと頷くのです。
授業後に「今日はあっという間に終わった!」とか、「今日の集中力を使い切った!」と言うような言葉が出る時には、その授業は充実していることになるでしょう。
もちろん、午前中の授業で「集中力を使い切った!」という発言に対しては注意をしなければいけませんが。——
40歳代の頃、翌日の授業準備で12時前に床につくことはなかったと記憶している。生徒が、何が分かりにくいのか、どうしたらすっきりと頭に入るのかと考えながら授業準備をすると、時の経つのを忘れてしまう。
講話の最後に、次のようにお話した。
—— 先ほどの「ワクワク感」に関連して述べておきたいことがあります。
学校のCLEの時間に、人生を「感動、喜び、イキイキワクワク」で生きると、運命が花開くのではないかと生徒たちに伝えています。
そのためには、アインシュタインの「We exist for our fellow-men.」(人間は他人のために存在する)、聖ドミニコ修道会の修道女、聖カタリナの「Charity for Your Neighbors(隣人愛)」、ヘレンケラーの「Life is an exciting business and most exciting when it is lived for others.」(人生は胸躍るものです。そして最もワクワクするのは人のために生きるときです。)にあるように、いかにして他のために生きることができるか、さらに、自分本位の立場ではなく、自分というものを超えたある何物かにイキイキワクワクでチャレンジできるかが大切なのです。その時に人間(自己)の天賦の才能を花開かせることができるのではないでしょうか。
「感動、喜び、イキイキワクワク」が充実した人生の原点ではないかと申し上げて本日の話を終わらせていただきます。——
と結んだ。