年に数度、用があって生まれ故郷の興居島(ごごしま)へ出かける。
興居島航路の最近の定期船は、前後がほぼ同じ形状であって、船首と船尾の区別がない。
このような船は瀬戸内海ではよく見かける。一般に船は接岸に時間がかかることは周知のとおりである。船長の技量にもよるが、小型の客船でも接岸するために3~5分も時間がかかる。船を回転させるのに、かなりの経験を要するからである。船首と船尾のない船であれば、行きは前進、帰りは後進となり、スムーズに接岸できる。時間短縮にもなり、燃料の節約にもなる。
島には2か所の港があり、2隻の船が就航している。もちろんフェリーである。船の中央に車専用のスペースがあり、左右に細長い客室が配置されているため、乗船できる船客数は限られている。以前、本校の中学生を連れて興居島へ遠足に行っていた頃は、船首と船尾のある大型の客船であったので、200名の生徒を一度に運んでもらえたが、現在では船の定員数が少ないため、二つのグループに分ける必要がある。
切符は船内で購入するという珍しい販売方法をとっており、船客が迷うことが多い。
昨年、船で興居島へ出かける用事があり、乗船した。この時は船上のデッキで瀬戸内海の風を楽しむという、ちょっと贅沢な気分を味わっていた。デッキのベンチに座って風と景色を楽しんでいたところ、景色の中にあの夏目漱石の「坊っちゃん」に登場する「ターナー島」が目に入った。以前にも紹介したことがあるが、正式名を「四十島(しじゅうしま)」という有名な小さな島である。
たまたまベンチの隣に座っていたご夫婦に、この島を紹介しようと思い、「あの島が夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場する「ターナー島」ですよ。」と声をかけたが、うまく伝わらなかった。すぐに分かったのだが、そのご夫婦はアジアから観光に来て、瀬戸内の島々を楽しんでいたのである。
日本語では通じないと分かったので、英語を話すことができるかどうか尋ねたところ、「少しは」とのことで、英語で「ターナー島」の話をしたが、夏目漱石をご存知なかったので、続いて興居島の観光について話をした。
島にはレンタルの自転車や自動車が用意されている。また、以前の「ひとりごと」でも触れたが、最近では、都会からやってきた人たちが島に定住して、コーヒーショップやうどん店、クラフトビールの店、ごく最近では「島の駅」の経営をしている。島の駅ではアイスクリームや興居島の名産品、ミカンをはじめ様々な品が販売されている。また、釣り具一式を貸し出してもいる。
土日は訪れる観光客も増えていると聞いており、元住人としてありがたく感じている。
観光客向けの新しいパンフレットや案内板ができて受け入れ態勢が整いつつある。今後さらに整備が進み、新しい興居島が生まれることを期待している。
自分も、お世話になった島に何らかの恩返しができればと考えている。