チュータ日誌

(2019/02/06)よみがえる愛光の歴史(第一期生 募集要項)

はじめに

今回も、愛光学園の歴史についてふり返ってみましょう。

前回の記事はこちら

昭和27(1952)年 11月、創立準備を何とか整えた田中初代校長は、昭和28年度生徒募集要項(第一期生用)を完成させます。

愛光学園はどのような生徒を求め、どのような教育をしていこうとしているのか、を世の中にうったえかけるものでした。

田中校長や当時の教員たちが、松山や日本の教育を憂い、強い信念と熱意をもって愛光学園を創立しようとしている様子が、募集要項から読みとれます。

 

募集要項を公表

昭和28年度生徒募集要項には、愛光の教育方針が明記されている。以下、一部を抜粋して紹介しよう。

 

最初の「本校の基本方針」という項目には、「高潔な、世界性のある人物を養成することを目的とする」「大学へ進む希望者を教育することを目的とする」などの記載があり、愛光の教育目的が明確に示されている。

 

「道徳教育としつけの徹底」という項目には、当時の世間の宗教感覚に配慮してか、「本校は宗教を教えることを目的としない」「宗教は最も内的なもので、外部からおしつけるようなことは、少しでもあってはならないと考える」との記載もある。

 

また、「優秀大学への進学を期する」という項目には、田中らが愛媛、松山の教育事情を憂いている記述も切実に書かれてある。以下に引用する。

 

旧松山高等学校の卒業生は、全員残らず旧制官立大学へ入学し、東京、京都の二大学への入学も、年々100名〜150名に上っていた。

その中の二割〜三割が旧制松山の中等学校の出身者であったので、松山人が年々30〜70名旧制官立大学へ入学していたのであり、東京、京都の二大学へも年々30〜45名は入学していたのである。

旧松山中学校のみの卒業生をとって見ても陸海軍の学校、旧官立の優秀な学校への入学者も相当多かったので、もしこれらが全部松山高等学校を志願したとすれば、この数はもっとずっとふえたはずである。

ところが最近の松山の四高等学校(松山東、松山南、松山北、新田)の卒業生は、旧官立大学へわずかに昨年17名、本年16名しか入学しておらず、東京、京都の2大学へは昨年11名、今年は6名入学したに過ぎなかった。

東京の新宿高等学校の本年卒業生は、日本で一番入学の困難な三つの大学へ、東大60名、一橋大17名、蔵前工業大学(現 東京工業大学)27名、計94名という大量入学を記録している。

これは特別に有名な高等学校の場合で、これを松山と比較するのは適当ではなかろうが、松山の現状が満足すべきものでないことは明らかである。せめて旧松山中学校程度にはありたいもの、できればそれ以上の成績を上げたいものである。そしてその可能性は十分あると確信するのである。

 

愛光の教育とは

さらに、募集要項の後半部には、愛光の教育の重要点についてまとめられており、

優秀な者のみを集めて教育すること」「男子のみを集めて教育すること」

大学へ行く希望の者のみを集めて教育すること

「基礎学科に重点を置くこと」「原理の理解に重点を置くこと」

記憶力の盛んな中学教育に力を入れること

「6年間の教育を計画的に編成すること」

優秀教授陣が上手な指導をすること」などの点を再掲しており、

「このような方法によって教育するので、生徒は普通にやって行くだけで知らず知らずの間に力がつくのである」という姿勢が示されている。

 

 

初代理事長からのメッセージ

この入学案内に、ゴンザレス神父(松山教会司祭、初代愛光学園理事長)は次のようなメッセージを添えた。

「このたび愛光中学、四年後に愛光高等学校を開設して、松山の教育界に献じますのは、われわれの管区長シルベストレ·サンチョ師の特別の命令によるものであります。

 

同師は今年の早春、初めて日本を訪れ、戦火に傷つき、敗戦に悩める日本人が、雄雄しく奮起しつつある英姿に接して深く心を打たれました。そしてこの再起の勇気の底にひそめる日本人の民族的素質の優秀性に深く感銘したのでした。

 

400年前、われわれの同国人、聖フランシスコ·ザベリヨが、日本人を東洋の華、世界の誇りとも讃えたと同じ感銘をもって。

 

この感激は日本に何かを献じてその再出発の餞(はなむけ)にしたいという念願となり、ここにわれわれに対する本校開設の命令となったのであります。私どもはこの命令に従って精神の面はもとより、物質の面でも、できる限りの努力をいたすことを誓うものであります。

 

願わくば、日本人が世界の有識者の期待にこたえて、世界の日本人として再生し、高貴な人格と、高邁(こうまい)な識見をもって、世界の誇り、世界の華、世界の良心となられんことを祈ります。

 

われわれの学校への努力が、その日本人の世界的使命達成に幾分かのお手伝いとなるならば、われわれの喜びはこれに過ぎるものはありません」

 

 

参考文献

「愛光学園50年史」 愛光学園 発行(2002)

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